「一度は泊まってみたい高級ホテル」というホテルの予約が当日取れるとは思いもしなかったので、10時にネット予約をして、11時過ぎに下着を詰め込み、ガソリンを満タンにしてとりあえずあわただしく出発した。
何日も前から予約するというのが苦手で、天気さえよければ出かけてしまおう、というのが私の旅行である。
家内は、いい宿に泊まって、おいしい物が食べられれば幸せ、という人だから、行く先のことで意見が衝突することはない。
旅行といってもドライブが目的で、3,4時間くらい運転して、その日に宿に泊まれれば疲れが取れるということでしかない。
私の住む武州からは、上州か信州かということになるが、夏はやはり信州。蓼科高原への旅となった。
ナビは関越道・上信越道のルートではなく、中央道を指示するのでそれで行くことにした。
私には信州というと、信濃路とか木曽路という昔からのイメージだけで、信州イコール日本アルプスという印象がない。
一度上高地に行ったことがあるが、河童橋から見る山々は写真で見るアルプスの風景に似ているが、絶対的な高さがない。スイス人からすれば日本の山は丘だという。
アルプスというとしゃれているが、飛騨山脈、木曽山脈というと登山靴ではなく、わらじとなる。
3時過ぎに白樺湖に着いた。一昨年、義兄の葬儀の帰りに寄ったが、女房と結婚前に初めて旅行したところであり懐かしい。
廃墟となったホテルが何件もあるが、豪華ホテルが新築開業となっていた。
まだまだリゾート産業はいけるということなのか。
4時過ぎに白樺湖から蓼科のホテルに向かったが、ドシャ降りとなった。
一般道から離れた広大なリゾート地の、落葉松の林に囲まれて、クラシカルなたたずまいのホテルがあった。開業40数年の老舗ホテルとなるらしい。
駐車場にはベンツ、BMWがズラリと並び、国産車はレクサス。私のような国民大衆車は見かけない、と書くのが文章の流れであるが、何台かはあった。
「たてしな」は蓼科と立科がある。表記の違いで同じ場所のことではないかと思っていたが、まったく違うらしい。
からまつも落葉松と唐松があるが、これは全く同じものであった。
奈良ホテルほど豪華ではないが、昔の西洋建築というような落ち着いた雰囲気の食堂は、年配のカップルでほぼ満席であるが、一人の女性もいた。
料理はフレンチにした。メインは鳥料理であったが、牛のステーキにできるという。牛に代えてもらったが、「別料金になります」と言うボーイさんの説明に気がつかなかった。
家内はもちろん聞こえていたが、どうせ私には聞こえていないだろうと、黙っていたらしい。耳がすこし遠くなってきて、金を使うことが多くなってきた。
高級な料理は分からない。ナイフとフォークを使って食べながら、カツ丼が無性に食べたくなった。
家内は、「さすが一流ホテル、とてもおいしかった」と言う。
「最高のロケーションと最高の料理」が、このホテルの売り物である。
「最高のおもてなし」は売り物にしていないらしい。
最近のホテルは、客と従業員が接触する機会がほとんどない。客は機械的にチェックインを済ませ、部屋のお茶も自分でいれ、カードで決済が終われば見送りもない。
杖をついた高齢者とロビー案内嬢が廊下ですれ違ったが、彼女は道を開けるような気遣いはしなかった。しかしサービス料は10%ついていた。
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