卒業式の季節ではないが、卒業式と言えば「蛍の光」と「仰げば尊し」であった。
しかし最近ではこれらの歌が卒業式で歌われることはほとんどなくなったらしい。
教師を賛美する内容が時代にそぐわないとか、「身を立て名をあげ」の部分が立身出世を呼びかけているようで、「民主主義」的ではないというのがその理由とされている。
歌われることのなかった「蛍の光」の3番、4番の歌詞は、まるっきり軍歌である。
「蛍の光」の原曲がスコットランド民謡であることは知っていたが、「仰げば尊し」は作詞作曲いずれも不詳とされていた。
近年の研究で、この曲が掲載されている歌集がアメリカで発見されたということだが、そうであるからアメリカ民謡ということではないらしく、スコットランド民謡という説が有力のようである。
しかし日本の唱歌にはスコットランドなどのイギリス民謡が多い。
「ダニーボウイ」「庭の千草」はアイルランド民謡。「グリーン・スリーブス」「埴生の宿」」はイングランド民謡。「アニーローリー」「ロッホ・ローモンド」などはスコットランド民謡であった。
イギリスは4つの特色のある地域から成る国であるから、一概に「イギリス民謡」と言っては不正確と言うことになるかもしれない。
古くからヨーロッパの国々とは異なる音楽的地盤があったように思われる。
「グリーン・スリーブス」は、日本で言えば関ヶ原の戦いの前には歌われていた民謡であるが、高校生の頃、飯を食うのも忘れるほど、このメロディに取り憑かれたことがある。
イギリス民謡をブログのテーマにする気はなく、いつもの通り、文章の流れからの脱線である。
「蛍の光」と「仰げば尊し」。メロディとしては「仰げば尊し」の方が好きである。
「蛍の光」はパチンコ屋の閉店や紅白歌合戦の閉幕の歌としては似合うが、惜別の悲しさはあまり感じない。
「ひめゆりの塔」「二十四の瞳」「ビルマの竪琴」において、「仰げば尊し」は別れの思いを表現した。
エンディングにある、「今こそ別れめ いざさらば」という歌詞が気持ちに残る。
まだわずかに残っている若さと老いとの別れめ。健康と病気の別れめ。夫婦の別れめ。
残りの人生、卒業以来の別れめだらけである。
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