人間の証明

つぶやき

 「人間の証明」という映画は森村誠一氏の小説を映画化したものであるが、1977年に映画化されたというから46年前ということになる。私がちょうど30歳のときということになる。

 テレビでしきりにこの映画の宣伝がされた。麦わら帽子とか、キスミーとか、外国人の出演者など、結構目や耳につくCMであった。
 制作は角川春樹事務所。あの頃書店にまだ元気があったようだ。

 失礼を承知で言うのだが、森村誠一氏のいわば推理小説である。買って読むほどのものではないし、劇場で金を出してまで観る映画とも思えない。しかし人間の証明という題名に興味があったし、CMに乗せられたのか観てしまった。

 森村誠一氏らしくバラエティに富んで、そしてほとんど内容のないものであった。
彼の顔を見ていると、純文学の作家になってもいいのではないかと思うが、純然たる大衆小説の作家であった。

 「人間の証明」。この題名はいくらなんでも娯楽小説や映画には重すぎる。
それが分からぬ森村さんではなかろうと思うが、とにかくこの題名をつけたかった、ということであろうか。
 
 ストローハットはホテルニューオータニ。キスミーは霧積温泉。
 「ちょっと遊びが過ぎるのではないか」と言いたくなる。私は二十歳の頃、霧積温泉に行ったことがある。

 物語の設定はやはり松本清張を思い起こす。
 現代の社会で殺人事件が起きて、その原因は遠い過去にあるという設定である。「ゼロの焦点」「砂の器」などの作品で清張さんが切り開いた推理小説の手法である。

 ゼロの焦点の犯人は、今は北陸の裕福な家庭の奥様であるが、昔東京の立川で米兵相手の売春をしていた女性である。
 砂の器の犯人和賀英良は幼いとき、ハンセン病の父と放浪の旅をした経験を持つ。
 人間の証明の犯人は、過去に黒人との間に子供を産んだ。

 「かめだはどうした」は亀嵩(かめだけ)のこと。「キスミー」は霧積のこと。明らかに真似ている。文章を真似ると盗作になるが、シチュエーションを真似ると新作ということになるのか。

 「人間の証明」。確かに格好いい題名であるが、人間の何を証明するつもりだったのであろうか。

 

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