世事傍観そして立春

つぶやき

 強盗を商売にするような連中が現れた。振り込め詐欺より少人数で効率がいいという。犯罪を実行する者を高額な報酬をうたってネットで募集する。応募する者がいるのかと思うが、世の中思ったより広いようだ。いくらでもいるらしい。

 暴力団に対する警察の締め付けが厳しいことから、いわゆる構成員たちが食べていけず新たな犯罪に走っている、という見方がある。暴力団は暴力団の世界に置いておけばよかったのかと思うが、どうもそんなレベルではない。人を殺してでも金が欲しい、という連中が世の中溢れているようだ。

 金欲しさに犯罪に走る者が多いが、犯罪者となったその後の人生はほぼ終わりとなるらしい。日本の社会は誰にも寛容な社会ではないが、犯罪者に対してはとりわけ世間の監視が厳しい。刑に服して罪を償った、というのは理屈上のことで、社会の制裁は一生続く。反省を認める社会ではない。

 私の叔父は保護司をしていた。その妻である叔母は小さな喫茶店を営んでいた。ある日私がその店にいたときある男性が入ってきて、先生(叔父のこと)はいますかと訊く。

 留守にしていて今日は帰りが遅い、と叔母が伝えると、その人は店の中を見渡し、ある人形を見つけて「飾ってくれたんですね」と叔母に言った。

 それは藁で作られた素朴な女の人形であった。店の雰囲気に合わないことからそれを飾ることを叔母も私も反対したが、叔父は普段のように穏やかな口調で、飾ってくれないか、と言った。

 その男性は犯罪を犯し、刑務所から出て来たらしい。叔父に世話になったと思い、刑務所で作った人形を服役中に送ったということが分かった。

 人形を見つけたときのその人のうれしそうな顔を覚えている。そして飾ることを叔母に頼んだ叔父さんはいい人だったんだな、と思った。私がまだ高校生の時のことである。

 サザエさんにはよく泥棒が出てくる。作者の家に泥棒が入ったことがあるらしい。それにしても出てくる泥棒に怖さがない。作者の意図が今一つ良く分からない。

 退職金が15年で700万円減った、という新聞記事があった。給料は上がらず退職金まで減るのであるから、ますます老後にお金がないわけである。

 電気代、ガス代、食料品のあいつぐ値上げ。「このままでは中間層の老後の生活に支障をきたす可能性がある」とあるジャーナリストが言うが、とっくに支障をきたしているのではないかと思う。

 防衛費増税問題。そもそも自衛隊の幹部が防衛問題の論議に参加していないというのがおかしい。これは軍隊の問題である。

 「外科手術の知識がないのに手術に事細かな指示を与えようとしているような人々」、と防衛省内局の背広組の退廃を指摘する記事があった。

 シビリアンコントロールということだろうが、これを機能させるようなうな政治構造を日本は持っていない。外国から直輸入した考え方だが、何十年経ってもその使い方が分かっていない。

 平和憲法を否定したくはないが、人を殺しても構わないという強盗が押し入るという時に、彼らの良心に期待したい、などという憲法がどこの国にあるというのか。

 平和憲法に手かせ足かせされ、自分の頭で物事を考える習慣を失ってしまっている。自民党だけではない。野党のバカバカしさにもほどがある。

 先日所沢の航空公園に蝋梅を見に出かけた。うっすらと香りが漂う。派手な花ではないが、わずかに訪れた春を知らせる花としてはふさわしい容姿である。

 連日関東地方は抜けるような青空である。日本海側は大雪に見舞われているようだ。わずかの雪は風情となるが大雪は命に関わる。太平洋側に住むことのありがたさを感じるが、北の人々には申し訳ない気になる。

 1月に近所に住む友人が亡くなった。昨年7月頃からパーキンソン病で施設に入っていたが、別の病気も見つかったらしい。亡くなる何日か前「どうしてこうなったのだろう」と何度も奥さんに話しかけたという。意識はかなり衰弱していた中でのことである。つらい話である。(了)

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