ワ グ ネ ル

つぶやき

 ウクライナ侵攻が始まって、ワグネルという言葉が新聞やテレビに登場するようになった。
 ロシアの民間軍事会社の名称だそうだが、ここ2、3日は、反乱、鎮圧、進撃、撤退、収束と、何がなんだか分からないくらいワグネルがらみのニュースが報道されている。
 プリゴジンという代表者が、ロシア政府に対しと何かと不満を持っているらしい。

 中村教授がまた突拍子もないことを言い出した。この人はウクライナ侵攻を笑い話としか考えていない。本当に教授なのか。

 しかしロシアの内乱には深刻な問題がある。ロシアは核大国である。この核がテロ組織の手にわたるようなことがあれば、世界は破滅に向かうことになる。

 この軍事組織の名称がなぜワグネルなのか。ワグネルと言えばあのワーグナーである。
 ナチス・ドイツとの戦争に勝利した日を戦勝記念日としているロシアにおいて、ナチスがプロパガンダに利用したワーグナーの名を使うとは考えられないから、創設者の名前などからとったのかと思っていたが、あのワーグナーであった。

 創設者の一人に熱心なワーグナー愛好者がいたらしい。ロシア語読みするとワグネルになるという。ワーグナーも、こんな組織の名に利用されるとは愉快なことではないだろう。

 ワーグナーの音楽について私は多く知っているわけではない。せいぜい歌劇(楽劇というのが正しいが)の序曲とか、その抜粋したレコードを聴く程度である。

 ワーグナーの音楽は長大である。しかし人生一度は全曲聞かなければならないと思っている。全曲聞かなければ人生の大事なものを置き忘れたことになるような気にさせる作曲家である。

 しかしワーグナーの偉大さは上記した序曲や抜粋したものでも十分分かる。信じがたいほどの天才であると思う。
信じがたいほどの天才はモーツァルトに対する言葉であるが、モーツァルトは天使のような天才であるが、ワーグナーは巨人のような天才である。

 誰もがワーグナーの魅力に驚き感動するが、それが今までの音楽とは異なるものであることから、人は畏怖の念を持つ。それほどワーグナーの音楽はすべてにおいて桁違いの人間業とは思えないものである。

 作曲家に対して心酔、熱狂という言葉はあるが、信仰という言葉はワーグナーに対してしかない。

 ワグネリアンという言葉がある。ワーグナーを信奉するファンのことである。ノイシュバンシュタイン城はワグネリアンであったルートヴィヒ2世が築造したものである。ここまで人間に影響を与える作曲家がほかにいただろうか。

 作品を全曲聞いたことのない者がいくら語ったところでカエルの屁のようなものである。しかし日本にももちろんワグネリアンはいるはずだが、あまり目立たない。日本ではワーグナーの楽劇が上演されることは滅多にないからそういう印象を受けるのかもしれない。

 日本ワーグナー協会というワーグナー愛好者団体のホームページに、本年度バイロイト音楽祭のチケットの案内が載っていた。販売金額20数万円である。
 飛行機代、宿泊代を入れたらいくらになるのだろうか。「バイロイト詣で」と言われる。信仰でなければこの金額は出せない。

 ちょっと思い付いたことだが、慶応大学にワグネルソサエティという音楽サークルがある。オーケストラと合唱団があるがいずれもこの名称を使う。なぜなのかと思ったら「偉大な作曲家ワーグナーに因んだ」となっている。

 オーケストラの創部は明治34年である。そのころからワグネルを名乗っていたらしいがすごいことである。

 福沢諭吉さんはヨーロッパに行っているがワーグナーを聴いたことがあるのだろうか。いずれにしても明治の時代からワグネルとはさすが慶応大学である。(了)

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