我が家の狭い庭に、ひときわ背の高いゆりが満開である。黄色い大輪の花をつける。通りがかりの人によく声を掛けられるらしいが、家内も名前を知らないという。
10数年前に鉢植えのものを買って庭に植え替えたら、今では人の背丈を超えるような高さに成長してしまった。我が家のシンボルツリーではなくシンボルフラワーである。
「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」と昔から言われているが、具体的にイメージが湧かない。
芍薬という花を知らないが、図鑑で見るとボタンに似ていて、言ってみればくどい花である。
ゆりは清楚な女性を表現するときに使われるらしいが、ゆりも種類によっては厚化粧のようなものもある。
多分、ゆりの花はいろいろな所で目にしているのであろうが、あまり私の気持ちの中に残る花ではない。群生していても、コスモスのような爽やかさがないからかもしれない。しかし秋の花ではないから、爽やかさを求めては酷ではある。
ゆりと聞いてまず思うのは花粉である。いつのことだったか、ゆりを触ってひどい目にあったことがある。
子供の頃からゆりを歌った歌に気になるものがあった。織井茂子さんが歌った、「黒百合の歌」という歌である。
「黒百合」というぐらいであるから題名から不気味であったが、曲中に「アッハー、アハッハ、アハッハー」という部分があって、これは笑い声でもなく、悲しみの表現でもなく、ただ織井さんの声が、幼い心には怖かった。
真っ黒なのかは知らないが、黒百合というものがあるらしい。黒百合の花言葉は「復讐」「呪い」。あまりいいことではない。
この歌の作詞は菊田一夫氏だが、どうして「黒百合は魔物だ」とか「黒百合は毒だ」とか「私は死ぬんだ」とかという歌詞を使ったのだろうかと思っていたが、あの女風呂をガラガラにしたという伝説的ラジオドラマ「君の名は」第2部のテーマ曲であった。私はこのドラマの世代ではない。
どうやら込み入った、複雑怪奇なドラマであったようだ。
ゆりの季節もそんなに長くはない。あらためて我が家のゆりを眺めてみた。
背が高いから八頭身の美人のようだ。家内の好みなのかあまり本数を増やさないのがいい。しかし立派過ぎて清楚という感じは受けない。
高嶺の百合という言葉を思い出した。「高嶺の花」ではなく、いきなり「高嶺の百合」である。「あざみの歌」の2番の歌詞にある。
「高嶺の百合のそれよりも 秘めたる夢をひとすじに」
やはりゆりは高嶺の花なのである。しかしあざみには申し訳ないが、あざみと比較されてはゆりも気の毒である。
何ごとも華やかで華やか過ぎないことがいい。ゆりはそういう花かもしれない。
小百合さんは相変わらず清楚であるが、百合子さんは大分くどくなってきた。やはりゆりは小百合がいい。(了)
コメント
カサブランカというと”白”が
一般的ですがクリーム色もあるようです。
写真ですのでよくは判りませんが
とても立派ですね。
最近知ったばかりなのですが百合の花は
花弁3枚、萼3枚なのだそうです。
私はず~っと6弁花(全て花びら)と
思っていました。