夜中の3時ころ目を覚まし、ニュースでも聞こうとラジオをつけたら「神田川」が流れていた。
曲が終わって、南こうせつとかぐや姫の特集番組であることを知った。私が25、6の時に流行った歌である。
結婚して2年目くらいであったと思うが津田沼のアパートで聴いた記憶がある。
私はバイオリンが好きだからこの曲に興味を持った。
ずいぶんヒットしたらしい。いまでもこの曲はテレビやラジオでよく聞くことがある。ひとつの時代を象徴するような歌になっているようだ。
この歌の神田川はどの辺のことを言っているのか、歌詞からは分からない。
神田川は東京の郊外から墨田川に合流する川である。
「窓の下には神田川」という歌詞があるが、神田川は私の知る限り、垂直な深いコンクリ―ト護岸の下を流れている。
どこから見ても水面は窓の下ということになる。
私は二十歳前後に、神田川のすぐそばに住んでいたことがある。
神田川の歌が流行ったころ、女性言葉を使い、なかなかうまいことをいっている歌だなと思ったが、この川が歌になるとは思いもしなかった。
神田川は都心を流れる大きな排水溝のようなものであり、当時は各所で氾濫を起こしていた。歌にするような美しい川ではない。
しかしそんな川でも、若く貧しい二人の生活を描くにはうってつけのものなのであろう。作者が意図したことなのか、実体験があったのか。この詞の作者は最近亡くなられたらしい。多分私と同年代の人だと思う。
この歌の歌詞に一つ分からない部分があった。「若かったあの頃何も怖くなかった。ただ貴方のやさしさが怖かった」
どういうことなのだろうか。
やさしいのに怖い。変な話である。しかしそうだから気になる。よほど深い意味があるのであろうか。
女房とこのことについて話をした記憶はない。素直な人だから、こんなへんてこな詞に関心など持つはずもない。やさしいのに怖い、などという男にはそもそも近寄らない人である。
それから何年も経って、仕事で知り合った女性とこの話をしたことがある。この人は、その意味が分かる、と言うのである。
どう分かるのか、とまでは聞かなかったと思うが、その人は思い付きではなく、納得しているように、分かる、と言うのである。やさしいのに怖い男性とつき合ったことがある人なのだな、と私は思った。
離婚を経験している女性であるが、その別れた男性を今も忘れられないようだ、という話をその女性の友人から聞いたことがある。
歌詞とは関係のないことだが、別れたご主人は結構なワルだったという話である。真面目で性格のいい女性が、ワルな男性に惹かれるという話はよく聞くし、現実にそういう女性を何人か見ている。神田川とは関係のない話であるが。
実はこの稿は、男性と女性の物の見方の違いについて書こうと思ったのである。
ところがこの歌詞についてとんでもないことが分った。
引用する歌詞に間違いがあってはまずいとネットを見たところ、「ただ貴方のやさしさが怖かった」というた部分は男の気持ちをうたったものだというのである。作者が何かの時にそう説明しているというのである。
「自分はまだ学生で、学生運動に身を挺し、警察に捕まるかもしれないし、将来のことは何も分からない。しかし同棲する女性は、そんなことに関係なく自分に尽くしてくれる。その彼女のやさしさを見ると怖くなる」そんなことが書いてある。
オイほんとかよ、と言いたくなるが、本当らしい。ネットにはそのことについて、いくつも記載がある。
じゃあ、今までの神田川はどうなるんだ。「若かったあの頃何も怖くなかった。ただ貴方のやさしさが怖かった」という女性の気持ちに想いを寄せた私の気持ちはどうなるんだ。
貴方は貴女だと言うのか。どこの歌詞を見ても「貴方」になっているではないか。詞は読む人の自由である、などと勝手なことを言うもんじゃない。言葉は伝わらなければ言葉ではない。
しかしまだ朝の9時過ぎである。酒を飲むにはいくらなんでも早すぎるか。(了)
コメント
利兵衛さんこんにちは。
今日のテーマは神田川という歌からですか。
貴方のやさしさが怖かった、その相手の男性は誰に対しても優しい人で当人にしたら私だけに
優しくしてほしかったみたいな感情かな、?
他の人のところに行ってしまうのでは?という不安な気持ちでしょうか。
出だしのイントロが何とも言えませんよね。