ハトを轢いて逮捕。コンビニコーヒーの小カップに大を入れて逮捕。ラーメン屋のふたをなめて逮捕。逮捕という言葉を耳にすることが多くなった。
外国人に対するしつこい職務質問に対して損害賠償請求が提起されたが、誰でも深夜歩いていれば職務質問される。
不愉快のあまり拒否すれば同道を求められる。邪魔な警察官の手を振り払えば公務執行妨害として逮捕される。
人を逮捕することが仕事である、という職業が世の中にある。世の中の安寧秩序のために必要な仕事とされている。必要な仕事であるが、子供や孫にはそんな職業はさせたくない。
「人格が職業を選択し、職業が人格を決定する」という言葉がある。
人を捕まえる職業がどんな人格を形成するか。言うまでのこともない。
人を逮捕することの要件は法律に定められているが、法律は文字であり、逮捕は行動である。文字通りに行動がなされているか、ということが実際において不明確になりやすい。問題の所在はすべてここにある。
ラーメン屋のふたをなめたからといって逮捕することもあるまい、という考えもあるし、業務妨害として逮捕は当然という考えもある。
微罪であれば罪に問うこともないということもあるようだが、何が微罪であるかが変わってきた。
ふたをなめる行為は器物損壊罪からすれば微罪であるが、ネット社会においては、ふたをなめる動画が拡散すれば業務妨害罪となる。
ネット社会になって新しい犯罪が増えてきた。高齢者は以前より社会との関わりが少なくなるわけだから、犯罪の被害者や、まして自分が犯罪者になるなどということは夢にも思わない。
しかしニセメールなどにより家にいても預金を盗られる時代である。孫を語って老後資金を騙し取る手口は後を絶たない。
コーヒーカップの操作を誤って、小カップに大をいれたら逮捕されてしまうかもしれない。「なんで逮捕されなきゃならないんだ」、と叫びながら逮捕されてしまう時代になりつつある。
「お年寄りが安心して暮らせる社会」こんな言葉が若い頃からあったが、遠い昔の話である。(了)
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