今朝3時前に目が覚めて、眠気もないのでラジオを聞くことにした。
 3時のニュースに、松本というアナウンサーがよく出ているが、「す」の発音が空気漏れのようになって聞き苦しい。
 
 NHKのラジオニュースには定番のような言い方がある。
 「昨日埼玉県の農園で芋ほり大会が行われました、参加した人達は口々に『楽しかったです』と話していました」
 ラジオ放送が始まった時から、こんな言い方をしていたのではないだろうか。
 
 前の晩の11時頃から始まる「NHKラジオ深夜便」という番組は、翌日の5時まで放送される。
 3時過ぎから4時まで歌謡曲の番組となるが、「日本の歌 心の歌」という番組名がついている。その時の特集によって、「作家で綴る流行歌」なるサブタイトルがつくこともある。別にクレームを言う気はないが、綴るという表現が嫌いである。
 ニュースが終わり、トイレから戻ってイヤホンをつけるといきなり、「あなたにあげる 私をあげる」という歌が飛び込んできた。西川峰子という人が歌う歌である。ひどい歌である。
 次の曲は「なみだの操」だという。殿様キングスというお笑い芸人が歌った、これまた下司の骨頂とも言うべき歌である。始まる前にスイッチを切った。
 この時間は「作家で綴る流行歌」として、千家和也という作詞家の特集であったようだ。
 名前は聞いたことのある人だったが、「あなたにあげる」や「なみだの操」の作詞者であるとは知らなかった。
 
 こんな詞を書く人はどんな人かと思ったら、「雨」「バスストップ」「終着駅」などの、なかなかいい歌の作詞者でもあった。私とほぼ同年である。食道がんで73歳の時に亡くなっている。
 私の嫌いな歌にいつも、「女のみち」と「なみだの操」の曲名をあげているが、これからは、「あなたにあげる」も入れることにする。千家氏はこのうち2つの作者ということになる。
 そんなことを考えてきて、山口百恵さんが歌っていた、「ひと夏の経験」という歌を思い出した。「私が大切に秘密にしてきたものをあなたにあげる」という内容である。「あなたにあげる」という歌と全く同じではないか。
 
 どいつもこいつも助平なことばかり考えやがって、作詞は誰だ、と調べたら千家氏であった。28歳の同じ年に「あなたにあげる」と「ひと夏の経験」を作詞している。山口百恵さん15歳。西川峰子さんは16歳であった。
「なみだの操」は、「あなたにあげる」「ひと夏の経験」の1年前に発表されたものであった。
 ここで千家氏は、「あなたのために守り通した女の操 いまさら他人に(ひとに)捧げられないわ」と書いている。よほど「守り通した女の操」が好きであったらしい。 
 「守り通した女の操」をお笑い芸人の殿様キングスに歌わせた後も、若い女性本人に歌わせたかったということだろうか。
 詩は短い言葉で表現するものであるが、言葉の選択を誤ると、どんなに才能のある人でも蟻地獄のように誤りから抜け出せない。
 作詞家にも魔が差すということがあるようである。いいものを作る時もあれば、駄作を作ってしまうこともある。駄作を作らないといいものが作れない、ということもあるのかもしれない。
 しかし千家氏というのは起伏の激しい人である。歌謡曲の良さを表現し、歌謡曲の低俗なことも表した。意図した結果とも思えない。両面を併せ持った人だったのであろう。
(了) 

  
  
  
  

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