がんについて語らねば

つぶやき

 森永卓郎さんがすい臓がんを公表したのは昨年の暮れのことだった。
 ステージ4のすい臓がんといえばあまりいい病状ではない。

 その後ネットには連日入院状況が報道されていた。抗がん剤による治療が選択されたらしい。
 先日退院されたという記事があったが、元気な頃の写真しかネットには出ないから様子が分からない。同じ病の人の希望になるように祈りたい。

 がんが社会で大きなインパクトとして語られたのはいつごろからだろうか。医学上の専門的なことではなく、日常生活における記憶上のことである。

 がんは胃がんから始まったような気がする。がんと言えば胃がんのことであったように思う。 私が20才前の頃である。あの頃医者はがんを告知しなかった。

 サザエさんの漫画にもこんな話があった。
 「先生がんじゃないでしょうね」と患者が心配そうに尋ねると、医者は「がんではありません」と答える。
 患者が診察室を出ると「がん」という医者の言葉が聞こえる。
 患者は「ああやっぱり」と首をうなだれる。
 窓の空には雁がわたっていく。医者は「ああ雁がわたって行く」と言ったのだ。
 そんなことが漫画になる時代であった。

 最近ではがんは直る病気と言われているが、日本人の死亡原因の1位であることには変わりない。

 初期の発見であれば完治の見込みがあるが。進行していれば一時的な回復はあっても再発・転移は防ぎようがない。

 ひとつの臓器にがんがとどまっていれば治療の方法はあるが、多くの臓器に転移すればいわゆる多臓器不全である。

 胃がんになったあるタレントさんが、体重以上の臓器を切り取ったという話がある。助かるはずがない。医者は何を考えていたのだろうか。

 現代の医療はまだ全身のがんには治療方法がないようだ。なによりがんを散らばらさないようにしなければならないということになる。
 散らばらなければ現状維持で生きながらえることは出来ると考えても大きな間違いにはならないようだ。
 
 ステージ4のがんの生死を分けるものはなんなのか。
 ネットによれば俳優の村野武範さんも小倉一郎さんもステージ4のがんであったが、医者を代えて元気に過ごされている。
 治るも治らないも医者次第ということがあるのだろうか。

 立川談志さんも忌野清志郎さんもがんの発見は初期であった。しかし二人ともそのがんの進行によって亡くなられた。
 喉頭がんであったから職業上、声帯摘出という治療法を取らなかった。がんの治療法と生き様が関連する。
 亡くなってしまった以上、それでよかったのだ、とお二人の勇気を賞賛すべきであろう。

 前立腺がんになった友人がいる。昨年久しぶりに電話で話をしたとき、「前立腺がんならそんなに心配ながんではない」と、彼を元気づけることもあって話をしたが、彼は「そんなこともない。西郷輝彦の例がある」と言う。
 芸能人のことなど全く関心がない人であったがやはり気にしているのだろう。確かに西郷輝彦の死は前立腺がんの人たちにはつらいニュースとなった。

 立花隆さんは64歳の頃、膀胱がんを発症され手術をされたが、2021年に80歳で亡くなられている。死因は急性冠症候群となっている。
 ご自分ががんになって、テレビなどを通じてがんに対する考え方などを述べておられたが、「がんは克服できるものではない」、という結論を持たれていたようだ。

 私もがんになった身として、立花さんが膀胱がんを発症され、手術をされた以後の経過を知りたかったが、それもかなわぬことになった。あの緻密な文章でがんを語ってほしかった。(了)

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